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プロフェッショナルの条件 by P・F・ドラッカー

●知識労働者は組織に依存しない

知識労働者とは、第一に、彼らは生産手段を所有する。
しかも、その生産手段は携行品である。第二に、
彼らは、(そしてますます多くの彼女ら)は、
雇用主たる組織よりも長生きする。

彼らの生産手段たる知識は、他のいかなる資源とも
異質である。高度に専門分化して、初めて意味を持つ。

脳外科医が真価を発揮するのは、脳外科に専門分化
しているからである。おそらく、膝の故障は直せない。
熱帯の寄生虫にいたっては、手も出ない。


あらゆる組織が「人が宝」と言う。ところが、それを
行動で示している組織はほとんどない。

本気でそう考えている組織はさらにない。

ほとんどの組織が、無意識にではあろうが、十九世紀の
雇用主と同じように、組織が社員を必要としている以上に、
社員が組織を必要としていると信じ込んでいる。

しかし、事実上、すでに組織は、製品やサービスと同じように、
あるいはそれ以上に、組織への勧誘についてのマーケティングを
行わなければならなくなっている。

組織は、人を惹きつけ、引き止められなければならない。

彼らを認め、報い、動機づけられなければならない。
彼らに仕え、満足させなければならない。

知識労働者と組織の関係はまったく新しいものである。

組織は、知識労働者に対し、その知識を生かすための
最高の機会を提供することによって、初めて彼らを獲得できる。

本書はPart1『いま世界に何が起こっているか』で産業革命が
もたらした本質を説き、新しい社会で組織が果たすべき役割に
ついて説明されております。

その社会的背景を前提に、Part2以降で個人個人が自らを
どうマネジメントし、成果を生み出し、成長していくかに
ついて述べられております。

いつも感じるのですが、ドラッカー氏の著書は非常に奧が
深いです。読む度に新たな発見があります。

これからの社会をどう生きていくかを考える上で
ふんだんにヒントがこめられた名著です。

今回は特に印象に残った点をご紹介します。

(1)自らの得意とする仕事の仕方は何か?

・人と組んだほうがよいか、ひとりのほうがよいか

・組んだほうがよいのであれば、どのように組んだときに
 よい仕事ができるか。チームの一員として働く時、
 最高の人がいる。助言役として、最高の人がいる。
 教師や相談役として最高の人がいる。相談役としては、
 まったく価値のない人もいる。

・仕事の環境として、緊張感や不安があったほうが
 仕事ができるか、安定した環境のほうが仕事ができるか。

・大きな組織で歯車として働いたほうが仕事ができるか、
 小さな組織のほうが仕事ができるか。どちらでもよい
 という人はあまりいない。GEやシティバンクのような
 大きな組織で成功しながら、小さな組織に移ったとたん、
 仕事がうまくいかなくなる人が大勢いる。逆に、小さな
 組織ではすばらしい仕事をしていながら、大きな組織に
 移ったとたんに、途方にくれる人がいる。

・仕事上の役割として、意志決定者と補佐役のどちらの
 ほうが成果をあげるかという問題がある。補佐役として
 最高でありながら、自ら意志決定をする重荷に耐えられない
 人がいる。逆に、勇気ある意志決定を自信をもって迅速に
 行う人がいる。

・ナンバー・ツーとして活躍していたが、トップになった
 とたんに挫折する人がいる。トップの座には、意志決定の
 能力が必要である。強力なトップは、信頼できる助力者と
 してナンバー・ツーを必要とする。

結論は一つである。今さら自らを変えようとしてはならない。
うまくいくわけがない。それよりも、自らの得意とする仕事の
仕方を向上させていくべきである。不得意な仕方で仕事を
行おうとしてはならない。

(2)リーダーシップはカリスマ性に依存しない。

ドワイト・アイゼンハワー、ジョージ・マーシャル、
ハリー・トルーマンの三人は稀なほど強力なリーダーだった。

だがいずれも、爪のあかほどもカリスマ性をもっていなかった。
1860年、あのやせこけたあか抜けしない田舎者だったイリノイの
田舎出のエイブラハム・リンカーンほど、カリスマ性を感じ
させない人物はいなかった。

さらに、両大戦の間ほとんど完全に挫折していたチャーチルにも、
カリスマ性はなかった。大事なことは、彼らが正しかったことだった。

カリスマ性はリーダーを破滅させる。柔軟性を奪い、不滅性を盲信させ、
変化不能とする。スターリンにも、ヒトラーにも、毛沢東にも同じ
ことが起こった。

アレクサンダー大王が無能な敗者とならずにすんだのは、
単に早世したからにすぎないことは古代史の定説である。

カリスマ性は、リーダーとしての有効性を約束するものではない。
ジョン・F・ケネディは、歴代のホワイトハウスの住人の中で、
もっともカリスマ性があった。だが、彼ほど何もできなかった
大統領はいなかった。

それでは、リーダーとは何か。

効果的なリーダーシップの基礎とは、組織の使命を考え抜き、
それを目に見える形で明確に定義し、確立することである。

リーダーとは、目標を定め、優先順位を決め、基準を決め、
それを維持する者である。もちろん、妥協することもある。

効果的なリーダーは、自分が世界の支配者ではないことを
痛いほど知っている。スターリン、ヒトラー、毛沢東といった
似非リーダーだけが幻想に取りつかれた。

真のリーダーは、他の誰もなく、自らが最終的に責任を
負うべきことを知っているがゆえに、部下を恐れない。

ところが、似非リーダーは部下を恐れる。部下の追放に走る。
優れたリーダーは、強力な部下を求める。部下を激励し、
前進させ、誇りとする。部下の失敗に最終的な責任をもつが
ゆえに、部下の成功を脅威とせず、むしろ自らの成功と捉える。

(3)人の強みを生かす

成果をあげるためには、人の強みを生かさなければならない。
弱みを気にしすぎてはならない。同僚の強み、上司の強み、
自らの強みを総動員しなければならない。

強みこそが機会である。強みを生かすことは組織に特有の機能である。


リンカーン大統領は、グラント将軍の酒好きを聞いたとき、

「銘柄が分かれば、ほかの将軍たちにも贈りなさい」

といったという。

ケンタッキーとイリノイの開拓地で育ったリンカーンは、
飲酒の危険は十二分に承知していた。

しかし北軍の将軍の中で、常に勝利をもたらしてくれたのは
グラントだった。事実、彼を最高司令官に任命したことが、
南北戦争の転換点となった。

酒好きという弱みではなく、戦い上手という強みに基づいて
司令官を選んだがゆえに、リンカーンの人事は成功した。

アメリカの鉄鋼王アンドリュー・カーネギーが自らの墓碑銘に選んだ

「おのれよりも優れた者に働いてもらう方法を知る男、ここに眠る」

との言葉ほど、大きな自慢はない。まさに、これこそが、
成果をあげるための処方である。

●第二の人生をどうするか

歴史上初めて、人の寿命のほうが組織の寿命よりも
長くなった。そのため、まったく新しい問題が生まれた。

第二の人生をどうするかである。

もはや、30歳で就職した組織が、60歳になっても
存続しているとは言い切れない。

そのうえ、ほとんどの者にとって、同じ種類の仕事を
4、50年も続けるのは長すぎる。飽きる。惰性になる。
耐えられなくなる。まわりの者も迷惑する。

今日、中年の危機がよく話題になる。45歳ともなれば、
全盛期に達したことを知る。同じ種類のことを20年も
続けていれば、仕事はお手のものである。学ぶべきことは
さしてない。仕事に心躍ることはない。

もちろん、誰もが第二の人生をもてるわけではない。

まだ、今日していることをそのまま続けている人たち、
あるいは似たことを繰り返しつつ、退屈しきって定年の
日を待つ人のほうが多い。

しかし、労働可能年限すなわち労働寿命の伸長を、
自らと、社会にとっての機会として捉えることによって、
これからの時代においてモデルとなるべきは、数の少ない
ほうの人たちである。

彼らこそ、成功物語として位置づけるべきである。

しかし、第二の人生をもつには一つだけ条件がある。

本格的に踏み切るかなり前から助走しなければならない。


労働寿命の伸長が明らかになった30年前、私を含め多くの者が、
ますます多くの定年退職者がボランティアとして非営利組織で
働くようになると予測した。そうはならなかった。

40歳、あるいはそれ以前にボランティアの経験をしたことの
ない人たちが、60歳になってボランティアをすることは難しかった。


書評では十分に伝えられないのが私にとってのドラッカーなのですが、
今後の自らのマネジメントを考える大きなヒントが得られる一冊です。


◆『プロフェッショナルの条件』
著者:P・F・ドラッカー
出版社:ダイヤモンド社


後悔度:★★★★★

★★★★★:読まないと、絶対、後悔する
★★★★ :読まないと、とても後悔する
★★★  :読まないと、やっぱり後悔する
★★   :読まないと、後悔する気がする
★    :読まないと、後悔するかな?

◆詳細&購入

プロフェッショナルの条件―いかに成果をあげ、成長するか (はじめて読むドラッカー (自己実現編))
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■編集後記

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沖縄で、一番のお気に入りのカフェになりそうです。

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コメント

チリ北部コピアポ近郊のサンホセ鉱山落盤事故救出劇の背景にドラッカーが!!―【私の論評】私の危機も救ったマネジメント論の良い事例がまた増えた?

ブログ名:「Funny Restaurant 犬とレストランとイタリア料理」

こんにちは。チリの落盤事故、全員救出です!!この救出劇の地下のメンバーのリーダー"ルイス・ウルスア氏"は、あの経営学の大家、ドラッカーの信奉者だったそうです。ドラッカーのマネジメント論が、この救出劇にも関係していたなんて、ドラッカー好きの私としては、大きな喜びであり、ますます、傾倒してしまいました。そうして、様々な分野の人がドラッカーの考えを知り、それを自らの仕事に適用して大きな成果を上げてもらいたいと思います。この救出劇をみていて、その想いを今まで以上にますます強くしました。私のブログでは、ドラッカーの理論が今回の救出劇においてどのような役割を果たしたのか、詳細に解説しました。詳細は、是非私のブログをご覧になってください。

投稿: yutakarlson | 2010.10.15 00:09

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受信: 2010.10.27 20:33

» プロフェッショナルの条件 いかに成果をあげ、成長するか 著/P・F・ドラッカー 編訳/上田惇生 [あなたに必要な一冊 目次と紹介(ビジネス書評)]
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受信: 2010.11.17 10:15

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