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2010年7月

日本を創った12人 by 堺屋 太一

●今日の日本にまで深く影響を及ぼす12人

聖徳太子から松下幸之助までわれわれ日本人の
発想、われわれの社会を規制するもののルーツを
12人の人物から考える歴史評論です。

人物の歴史的業績、正確な経歴、生きた時の
本当の姿よりも、歴史の中で神格化された
「事実」も含めて、現代の日本と日本人に
与えた影響をとらえています。


(1)聖徳太子と「ええとこどり」の気風

聖徳太子は世界でただ一人、習合の思想を
発案した偉大な思想家である。


※習合=さまざまな宗教の神々や教義などの一部が
    混同ないしは同一視される現象

日本古来の宗教と外国伝来の仏教とが両立し、
その間に宗教というより生活の規範である
儒教を加えて、3つのものが共存し得るという
論理を展開した。

宗教的にいうと、一つを信仰することは他を
排することでもある。だから複数の宗教を
同じ人間が同時に信じてもよいというほどの堕落はない。

聖徳太子の発想と実践は、宗教的に堕落である。
けれでも政治的には飛躍である。

これを考えついたのは世界広しといえども
聖徳太子ただ一人だ。

日本以外の国で多数の宗教を同時に同一人が
信じてもよいといった宗教者は、まずいないだろう。

ここから「ええとこどり」の発想が生まれ、
新しい文化を取り入れても、古い文化を捨てず、
何でもどんどん追加するようになった。

その結果、現在でも日本人はクリスマス・パーティや教会での
結婚式は取り入れる。(キリスト教)
けれどもお葬式は仏寺で執り行う。(仏教)
盆踊り(仏教)にも行けば、初詣(神道)にも行く。
座禅(仏教)も組めば、御輿(神道)も担ぐ。

これに何の矛盾も感じることなくわれわれは行っている。

われわれ普通の日本人には宗教戦争など、
本当はよく分からない。

(2)光源氏

光源氏とはもちろん架空の人物である。
しかし、われわれが平安貴族をイメージしたり、
その生活ぶりや精神世界を想像するには
『源氏物語』が最もわかりやすい代表格だ。

日本では、あまり細かいことをいう人は
大物ではない、という風潮がある。

この発想が今日の日本でも社会構造の
形成に重要な影響を与えている。

逆にいうと、トップが指導しないから
その結果、下の者が大勢でいろいろなことを
決めていく集団的な意志決定構造が生まれる。

「集団指導」といえば聞こえはいいが、
各セクションが個々別々に決定し、行動し、
最終責任の所在が分からない事態にもなりやすい。

平安貴族は領地である荘園の管理は
地頭に任せ、仏教系や神道系の様々な
儀式を行うことで国の気風と様式とを
全国に伝えることによって、日本国としての
風格を保ち、全国的な心理的文化的統一を
維持するのが最大の目的であった。

これが日本の貴族像、さらには「上品」の
概念の原点になった。

(3)石田梅岩

石田梅岩は江戸時代の人で、戦国時代後の
復興景気が一段落し、バブル崩壊後の時代を生きた。

物が売れない時期に、勤勉に働くこと、
倹約して清貧に生きることを説いた。

「諸行即修行」

勤勉に働くことは人生修行だといった。
諸行、つまり農民なら農耕、商人なら商い、
職人なら物つくり、何でもいいからその
生業に勤勉に携わっていると、自らの人格が
修行されるとした。

「生産性や経済性を度外視してでも勤勉に
 働くことはいいことだ」

「遊んでいるのはもったいない」

と、ここから日本人全体が考えるようになった。

勤勉と倹約を両立させるためには、
生産性を下げるだけでなく、人の気がつかない
細部までこだわり、どうでもよいところまで
丁寧に作る職人こそ評価されるという考えに
つながった。

これは世界一の品質を実現する一方で、
過剰品質による高コスト社会、手続重視社会
にもつながっている。

●日本における「過去」の存在

日本においては、「過去」が大きな存在である。
今日の日本の成功も失敗も、日本の「過去」とは
無縁ではない。

今、日本はまた、大変改の時代を迎えている。
日本は「過去」を消し去らぬ反面、「過去」の
文化のある面を巧妙に切り捨てた。

源頼朝は鎌倉に幕府を開くことで、平安貴族の
文化を脱ぎ捨てた。織田信長は楽市楽座と兵農分離を
実現することで、貴族化した足利幕府管理体制の文化を
過去に追いやった。

大久保利通は、試験で合格した官僚の主導力を
確立することで、武士階級というものを、制度や
権力としてだけではなく、文化としても否定した。

明治10年以降に、武士の服装髪型や言葉遣いが
復活することはなかった。

フランス革命もロシア革命もなし得なかったことを、
明治の日本はあまり血を流さずになし遂げたのである。

今、われわれが直面している大変革も、
制度や組織の変革、財政数値や文章手続の変更で
終わるものではない。

必要なことは、明治以来積み上げられてきた
官僚文化を改め、「民の文化」を築くことである。

先人たちが生み残した何を守り、何を切り捨てるか、
その選択こそが日本と日本人の未来を決定するであろう。


◆『日本を創った12人』
著者:堺屋 太一
出版社:PHP文庫


後悔度:★★★★

★★★★★:読まないと、絶対、後悔する
★★★★ :読まないと、とても後悔する
★★★  :読まないと、やっぱり後悔する
★★   :読まないと、後悔する気がする
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